店長：滝
ウイスキーにフォーカスしたプロダクトを展開するブランド、KYKEY-キキ- より、鋭い個性を持つ超前衛的テイスティンググラス。
名作 AROMA GLASS -BASIC- の対抗馬、-STILL-の誕生です。

ウイスキーの香りをグイグイと開き、気持ちよく口に運んでくれる万能タイプの-BASIC-に対し、
-STILL-の個性は、あらゆる香りをその場に静止させることに特化したこと。
ノージングのボリューム感は圧倒的です。

安易に「飲みやすくしない」こと。
それが個性を立たせるということ。
愛好家の探求心に応える逸品です。

一方で、初めてのウイスキーグラスをとお手に取るのであれば、オールマイティな-BASIC-の方が安心でしょう。
「プレゼントにグラスを贈ったら、既にお気に入りを持っていた」
…なんて話をよく聞くグラスの贈り物ですが、
セカンドツールとして立脚する-STILL-ならばこそ、そんな心配はご無用です。

高級飲食店向けテーブルウェアーで知られる 木村硝子店 を製造パートナーとし、ウイスキーを通じて「はっ」とする体験を伝えてくれます。

【KYKEY-キキ- ブランドサイトはこちらから】

店長：滝
コアなウイスキーファンの方に向けて、もうちょっとお話をさせてください。
私の思う AROMA GLASS -STILL- の魅力をお伝えしたいと思います。



AROMA GLASS -STILL-の魅力の1
■ボウルの広さと「波打ち」

-BASIC-の対抗馬である-STILL-の個性をご理解いただくより先に、まずは-BASIC-と-STILL-共通するボウルの特徴、「波打ち」について述べずにはいられない。
なぜなら、香りが鼻に届くより前に、ボトルがあり、ボウルがあるからです。

一般的なウイスキーテイスティンググラスのボウルの狭さでは、グラスを前後に動かしても「波打ち」の動きは殆ど見られませんが、本品はボウルが広い分「波打ち」のスペースがあり、同量のお酒を注げば薄く広く収まることから、スワリングよりも大胆に空気を取り込ませることができるように思います。

ここで、700mlのボトルと付き合っていくときに、開けたての一杯を"1"とし、時間経過とともにウイスキーが変化した後の、最後の一杯を"10"とします。
開けたての"1"や中間の"5"よりも、最後の一杯の"10"が何より一番好きだという方には、実はワイングラスがオススメです。
なぜなら、この「波打ち」による香りの広がりは-BASIC-や-STILL-以上にボウルのワイドなワイングラスでならば、より極端に体験可能だからです。
もっとも、ウイスキーを30ml注いだワイングラスでは液量に対するリンス面が広くなりすぎてしまい、香りを「ゆっくり引き出す」という操作自体が難しいことから、開けたての"1"を、"7"や"8"では留めることはできずに"10"まで開いてしまうこと、それゆえに香りが早めに抜けてしまうことは、良くも悪くも特徴的であるといえると思います。
逆に、最後の一杯の"10"よりも開けたての"1"が一番お好きだという方には、「波打ち」なく、「引き出す」ことの難しいグラス、例えばシャンパングラスのように細長いものが良いでしょう。
ボウル底部のウイスキーは空気に触れることなく、開けたての"1"は"1"のまま。"2"や"3"へ進みづらい点が特徴です。
ここで登場するのが一般的なウイスキーテイスティンググラスで、シャンパングラスよりずっとスワリングの余地があることから、開けたての"1"を"3"まで広げる、中間の"5"を"7"まで広げることができ、更に途中の"2"または"6"を楽しむことができる優れものです。私もAROMA GLASSに出会うまでは、ずっとこのタイプのグラスを便利に使っていました。

さて、AROMA GLASS -BASIC-と-STILL-に共通する広いボウルではどうでしょうか。
一般的なウイスキーテイスティンググラスのスワリング性に加え、「波打ち」の効果があることで香りを広げる力が強まった本品は、開けたての"1"をゆっくりと"5"まで広げる、"6"で注いだものをゆっくりと"10"に近づけるよう広げることができるイメージ。つまり、香りを任意に引き出しながら味わいの移ろいを感じることができるのです。

開けたてのウイスキーを一般的なウイスキーテイスティンググラスで楽しむ場合において、まずは"1"の香りを感じて味見、スワリングし"2"の香りを感じて味見、「広げきった」と思ったら少量加水で変化をチェック…、という順番を採る方も多かろうと思いますが、これまでの「広げ切った」地点は、酒器によっては道半ばの"3"に過ぎず、実は「波打ち」の先には"4"や"5"ならではの味や香りがあったのかも…。
そう思うと、今までもったいないことをしていたのかな、なんて思えてきてしまいます。

ボトルがあり、ボウルがあり、鼻を目指すウイスキーの次なる通過点、それはグラスの口部です。



AROMA GLASS -STILL-の魅力の2
■見えない刺激を発掘し、魅力とする

ボウルから口部にかけてのグラス上部について、-BASIC-と-STILL-は全くの別物。対にある存在です。

ボウルから気持ちよく香りの立ち昇る-BASIC-に対し、-STILL-はギュッと窄まった形状が香りを留め、逃しません。
まるで、一回の吸い込みで二回分のアロマが鼻を駆け抜けるよう。香りには密度があることを思い知ります。
まして、広いボウルで波を立たせてからのノージングは強烈で、アルコール度数も3%くらい高まって感じられます。
高度数で力強いウイスキーを注ごうものなら、その香りのアタックはむせかえるほど。目一杯ウイスキーを感じられます。

一方で、静かなウイスキーや緩んだウイスキーからは、標準的なグラスではキャッチできない隠れた魅力を次々に見つけられる。
まるで発掘調査をするような感覚です。
同じお酒を注いだとしても、標準的なグラスと-STILL-とではまるで別モノに感じられ、慣れたお酒にさえ新しい魅力を発見することができるよう。
もうクリアし終えたゲームを裏ワザを使って遊び直すような、そんな楽しさを覚えます。

香りに密度を感じるからか、一度のノージングの満足感は非常に高く、自然とグラスを傾けるペースもゆっくりになり、時間をかけて一杯を楽しむことができるよう。
はやる気持ちを我慢してペースを落とそうというのとは違う、豊かな時間がここにあります。



ウイスキーを飲み終えた後、もう空いたグラスからでさえ、鼻を近づけてみると香りがたっぷり閉じ込められていることに気がつきます。
その香りのボリュームたるや、もしかしたら、標準的なグラスの注ぎたてを上回ってしまうかも。

愛好家だからこそ、持っていたい一脚であるなと、私は思います。

あなたはどんなウイスキーを注ぎますか？