産地から選ぶエリア別ウイスキー
自然と時間とが風味を育むウイスキーは、たとえ同じ蒸留所工場で造られるウイスキーであっても、樽ごとにその風味は異なり、同一のレシピの下で完成させられたウイスキーでさえ、一つとして同じ樽はありません。
そうはいえども、あっちの国の蒸留所とこっちの国の蒸留所とでは味覚や食文化、気候や地質、原料や製法、酒税法までがそれぞれ異なり、同じ島のお隣さん同士ではこれらが近しいことから、そこに地域性やエリアごとの"系統"が生じます。
従って、例外ある大まかなお話にはなりますが、このページではその系統についてご案内をさせていただきます。
グラスを片手に、「都会的な立ち上がりだな…」とか呟けるイイ男になれますよ。モテるかは微妙ですが。
スコッチウイスキー
イギリスの北方、スコットランド産ウイスキーをスコッチウイスキーといいます。
ひとくちにウイスキーといっても国によりその定義はまちまちですが、ざっくり二分すると、
「大麦麦芽(モルト)系ウイスキー」と「とうもろこし系ウイスキー」に区分けすることができます。
大麦麦芽系ウイスキーの王様はスコッチウイスキー。
日本産とアイルランド産も大麦麦芽系の仲間たちです。
とうもろこし系ウイスキーの王様はアメリカンウイスキー。
カナダ産ウイスキーはアメリカンの仲間に入ります。
国も違えば原料も違うし、むしろ共通点の方が少ないとさえ言える両者は、当然に味わいも異なります。
同じ茶ジャンルでも、静岡緑茶とアールグレイではまるで別物であるような具合ですね。
スコッチの6つの生産エリア
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スペイサイドモルト
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スコットランド・ハイランド北東部に位置するスペイ川という大きな川の流域で、50以上の蒸留所が点在するスコットランド最大のウイスキー生産エリア。
ハイランドからヘンな形にカットされたようなこの地形は、スぺイ川とその支流の形に由来しているのです。
このエリアのウイスキーは…
・ フローラル
・ フルーティ
・ クセや臭みがない
・ スムースな飲み心地
ウイスキービギナー様にもオススメできる、親しみやすい味わいが特徴です。 -
ハイランドモルト
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イギリス北方スコットランドの、更なる北方・ハイランド。
スコッチウイスキーの産地区分としては面積的に最大で、蒸留所数も多いことからハイランドを更に東西南北に分けて分析される場合もあります。
北ハイランドはこんな感じ、南ハイランドはこんな感じ、とご理解いただいても良いのですが…
それではちょっと難しいので、「普通のスコッチモルトウイスキー」または、「象徴的なスコッチモルトウイスキー」と大まかに捉えることをオススメしています。
味わい深く、本格かつクラシックで、しかし親しみやすさばかりとも限らない。そこまでを含め、スコッチウイスキーの魅力であると思うのです。 -
ローランドモルト
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スコットランドの南方・ローランド。
ローランドの北西端には首都エジンバラがあり、ローランドの南端はイングランドとの境界線が引かれます。 山あり谷ありのハイランドと比べ、なだらかな地形と穏やかな気候、地理的な利便性により人口や産業が集中しています。
このエリアのウイスキーは…
・ ライト
・ クリア
・ さっぱり
・ スムースな飲み心地
本格味よりもう少し軽やかなキャラクターからは、ポップで都会的なイメージを受けます。 また、ブレンデッドウイスキーの原料となるグレーンウイスキー蒸留所はローランドに集中しています。 -
アイランズモルト
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イギリス本土より海を隔てて浮かぶ島々、アイランズ。
ある島では土壌が岩盤に覆われ絶えず水不足であったり、ある島では人口の10倍以上もの野生の鹿が生息していたりと、それぞれに異なる環境で造られるウイスキーは、その味わいもそれぞれに個性的。
スモーキーフレーバーの由来となる化石燃料の「ピート」とはその土地に堆積した植物が長い時間をかけて組成されるため、内陸部で収穫されるピート、海沿いで収穫される海藻由来のピート、木の育たない島で収穫されるピートでは「ピーテッド」の内容にすら個性が現れます。
"普通・象徴的"というフレーズでご紹介をしたハイランド・ウイスキーとは対になる存在であるといえるでしょう。 -
アイラモルト
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イギリス本土より西に浮かぶ島々のうち一つ、アイラ島。
スペイサイドとともに「ウイスキーの二大聖地」とも呼ばれるアイラウイスキーのフレーバーは非常に独特。 その味わいのヒミツは、「ピート」という燃料を炊き込み燻製したモルトを仕込みに使うこと。世界中のウイスキーファンを惹きつけてやみません。
このエリアのウイスキーは…
・ ヘビースモーキー
・ クセの強い味わい
ちょっぴり上級者向けの味わいにつき、いきなりアイラ島に足を踏み入れてスコッチ嫌いになったりしないで下さいね。 -
キャンベルタウンモルト
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ハイランド南西にある半島にある小さな都市、キャンベルタウン。
かつてウイスキー産業で大きく栄えた歴史的背景により、現在もこの都市を1つの生産区分として数えるのが一般的ですが、現在はごく少数の蒸留所が稼働するのみ。
このエリアのウイスキーは…
・ クラシック
・ 塩っぽい
・ スパイシー
・ リッチな飲み心地
周囲の倒産の波に揉まれ、それでも現在まで稼働を続ける蒸留所の実力の高さはお墨付き。少数精鋭といえましょう。
アイリッシュウイスキー
アイリッシュウイスキーは、アイルランド生まれのウイスキー。
いろいろと諸説アリですが、アイルランドはウイスキー発祥の地であるとされる場所。
世界最古とされるウイスキー蒸留所が存在し、現在も稼働を続けています。
このエリアのウイスキーは…
・ ソフト
・ マイルド
・ すべすべした舌触り
・ 軽やかな飲み心地
スコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーと同様に「大麦麦芽(モルト)系ウイスキー」であることから、スコッチファンやジャパニーズファンの方は要チェックです!
アメリカンウイスキー
ケンタッキー州を最大産地とするアメリカンウイスキー。
その殆どは、スコッチやアイリッシュのような「大麦麦芽(モルト)系ウイスキー」ではなく、「とうもろこし系ウイスキー」です。
アメリカンを代表する2エリア
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バーボンウイスキー
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アメリカ産のウイスキーがアメリカンウイスキー。
では、バーボンウイスキーとは何なのか。
簡単に申し上げると、バーボンとは原料穀物のうち約半分以上をとうもろこしが占めるウイスキーのことで、その最大産地であるケンタッキー州産のバーボンを特に「ケンタッキーバーボン」といいます。
このエリアのウイスキーは…
・ パワフル
・ スイートかつドライ
・ リッチな飲み心地
小栗旬やローラのハイボール的なイメージ戦略がありつつも、それでもやっぱり西部劇ガンマンが飲み干すワイルドな酒、というイメージがある方も多いのではないでしょうか。 -
テネシーウイスキー
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ケンタッキー州の南に接するテネシー州。
ここで造られる「テネシーウイスキー」は、ケンタッキーバーボンとはちょっと違います。
テネシーウイスキーにあり、ケンタッキーバーボンにないもの、それは、サトウカエデの炭によるウイスキー原酒の濾過工程です。
このエリアのウイスキーは…
・ なめらか
・ ソフトでライト
・ フルーティな飲み心地
テネシーウイスキー業者は「バーボンなんかとは別格」だと言い、対するバーボン業者は「濾過なんかしたら味が抜ける」と返すのだとか。
あなたはどっち派でしょう?